日本で花粉症といえば、まずスギ花粉が連想されますが、ヨーロッパではイネ科、アメリカではブタクサ(キク科)が主な原因植物となっています。
そして近年、国内においても、特に初夏から秋の時期にかけてはイネ科やキク科の植物に対するアレルギーの増加と共に、口腔アレルギー症候群の患者も増えており、実はその間には深い関係があることがわかっています。
口腔アレルギー症候群とは、果物や野菜を食べた際、約15分以内に唇や口の中にイガイガ感・かゆみ・腫れなどのアレルギー症状があらわれる病気です。
スギ(スギ・ヒノキ花粉症) | トマト |
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シラカンバ(シラカンバ花粉症) | リンゴ モモ さくらんぼ |
イネ・カモガヤ(イネ科花粉症) | トマト スイカ メロン オレンジ |
ヨモギ・ブタクサ(ヨモギ・ブタクサ花粉症) | メロン スイカ セロリ |
口腔アレルギー症候群の方は、ラテックス(ゴム)によってアレルギー症状を引き起こすことも多いといわれています。これを「ラテックス・フルーツ症候群」と呼びます。
一般的な食物アレルギーは、食べた物が一部未消化のまま吸収され、そのタンパク質(抗原・アレルゲン)に対する抗体が形成された結果(感作)、再度同じ抗原を吸収することで全身にアレルギー症状が生じます。
一方、口腔アレルギー症候群の場合は、対象となるタンパク質(Ⅰ)は、通常、ほぼ完全に消化分解されてから吸収されるものです。
しかし、それと類似したタンパク質(Ⅱ)を含んだ花粉が粘膜を通して吸収され体内で抗体が形成されると、タンパク質(Ⅰ)も異物として認識してしまい、口腔内で直接接触した部位にアレルギー反応を生じさせます。
食物アレルギー | 口腔アレルギー症候群 | |
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感作経路 | 食物が腸管から吸収されて感作 | 花粉の吸入により感作 |
代表的な原因となる食品 | 卵・牛乳・小麦・魚など | 花粉のアレルゲンタンパクと類似した タンパク質を含む果物・野菜 |
アレルゲンの特徴 | 熱や消化酵素に対して 安定したタンパク質 |
熱に不安定で消化されやすいタンパク質 |
症状を誘発する箇所 | 消化管での吸収により発症 | 口腔粘膜で発症 |
症 状 | 主に全身症状 | 口唇・口・のど |
口腔アレルギー症候群の対策としては、原因食物の摂取を控えることが基本となります。
症状が頻繁に出る時期には、これに加えて、アレルギー反応が起きるのを抑える薬(抗アレルギー薬)をしばらく定期的に服用することが必要になります。