健康診断の結果の多くは、検査値と基準値を比較し、正常と異常ありに大別されるというのが一般的な認識ですが、正しく理解されていない面もあります。
そこで今回は、健康診断の判定基準となる基準値について説明させていただきます。
健康診断における基準値とは、日本人の「健康な人」の検査データを統計学的に算出した数値のことです。その算出方法は、20~60歳くらいまでの健康な人の検査データをもとに、上下限のおよそ2.5%ずつの合計5%をカットした、残りの95%の範囲を基準値としています。
※基準値は、公表している医療系学会、団体等により差異があり、また検査方法や分析機器によっても多少異なってくることがあります。
基準値はひとつの目安ですので、基準値を外れたからといって、必ずしも異常というわけではありません。各検査項目を総合的に見て、過去の検査データとの変化や病歴などから最終的な判定が行われます。また、基準値に収まっているからといって、健康上に全く問題がないとも限りません。このような勘違いを防ぐために、以前は「正常値」として示されていたものが「基準値」と改められました。
例えば、血糖値や尿酸値は、基準値の上限を2~3割上回るだけでも「要観察レベル」から「治療レベル」に引き上げられるため、日頃から細かい変動の観察が重要です。一方、心不全の指標とされているBNPというホルモンは、基準値の5倍でも「要観察レベル」にあり、6倍程度からやっと「治療検討レベル」になってきます。さらに、細菌やウイルス感染の指標であるCRPという検査項目は、通常の感染症でも基準値の数十倍に跳ね上がることがあります。基準値だけでなく、その変動幅を理解することも、検査値の正しい解釈のために重要です。「要精密検査」や「要治療」と診断された方は、早めに医療機関を受診しましょう。
健康診断は受けたらそれで終わりではありません。検査結果を基準値と照らし合わせて、生活習慣の改善や治療につなげることが大切です。また、検査結果は過去の検査データとの変化を見るために必要ですので、必ず大切に保管しておきましょう。健康診断の結果でわからないことや不安が残るときは、担当医や薬剤師、健康保険組合等の健康電話相談を利用して相談してみましょう。