冬季うつ病とは、季節の変化が原因となる季節性うつ病のひとつです。秋から冬に症状があらわれ、春先になると自然に回復していきます。成人前後から徐々に発症し、男性よりも女性に多くみられます。一度発症すると毎年繰り返すことが多いため、原因と特徴をよく理解して対処することが重要です。
冬季うつ病の原因は、日照量不足であるといわれています。緯度が高く日照時間の短い北国ほど、冬季うつ病の発症率が高いことがわかっています。一般的なうつ病と大きく異なるのは、過食・眠気といった症状があらわれやすいことです。人類の祖先が冬に備えて栄養を蓄え、静かに過ごす準備をしたことや、それよりずっと以前の進化過程にあった冬眠習性の名残かもしれません。
日照量の不足により、必須アミノ酸のトリプトファンから生成される神経伝達物質「セロトニン」の合成速度が落ちると、セロトニン神経機能が低下し、冬季うつ病を発症しやすくなります。栄養面ではトリプトファンの摂取を心がけましょう。また、トリプトファンを効率よく吸収するには、糖分も必要とされるため、甘いものや炭水化物を多量に食べたくなる傾向にありますが、糖分の摂り過ぎには注意しましょう。
セロトニンは目から入る光によって合成が促進されます。この場合の日照量の不足とは、目から取り込まれる光量の不足のことです。
高照度光照射療法とは特殊なライトを使用して、太陽光に近い光を目から取り込ませ、生体リズムを整える治療法です。保険適用外となりますが、睡眠障害外来などで受けることができます。また、専用の照射装置も市販されており、基本的には30分程度強い光を浴びる仕様になっています。ただし1番良いのは、朝起きたらカーテンを開けて太陽の光を浴びるという、規則正しい生活を送ることです。